疾患の概要
梅毒(ばいどく)は、「梅毒トレポネーマ」という細菌によって起こる性感染症のひとつです。主に性行為(オーラルセックスなども含みます)を通じて感染し、皮膚や粘膜の小さな傷口から体内に入り込みます。感染すると、数週間後にしこりや発疹などの症状が出ることがありますが、気づかないうちに進行してしまうことも少なくありません。最近では、若い女性の間でも感染が増えており、妊娠中に感染してしまうと、お腹の赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があります。
放置した場合
梅毒は、感染後すぐに正しい治療を受ければ治る病気ですが、放っておくと体の中で静かに進行していきます。初期には小さな潰瘍(しこり)や湿疹のような症状が出ますが、次第に皮膚だけでなく全身の臓器(心臓や神経など)に影響を及ぼすこともあります。妊娠中の感染では、赤ちゃんに感染することで「先天梅毒」となり、流産・早産・胎児の発育不全などの原因になることもあります。
検査方法
当院では、血液検査によって梅毒の診断を行っています。2種類の検査(非特異的検査:RPR法、特異的検査:TPHA法やTPLA法)を組み合わせて、判断します。場合によっては、1カ月後に再検査を行うこともあります。妊婦さんには妊婦健診の初期段階で全員に梅毒検査を行っていますが、中期以降でも症状や感染の可能性がある場合は再検査をおすすめしています。
治療方法
治療にはペニシリン系の抗生物質が基本となります。当院では、主にアモキシシリンというお薬を4週間内服していただきます。2021年以降は、ベンジルペニシリンという注射薬も利用できるようになりました。薬によって一時的に発熱やだるさが出ることがありますが(Jarisch-Herxheimer反応)、しばらくするとおさまりますので、心配なことがあればいつでもご相談ください。
費用
検査費用(保険3割負担、初診の場合):2,000円程
治療費用(処方箋料)(保険3割負担、再診):600~700円(薬代は別)
参考までに薬局での支払いは保険3割負担で):1カ月分で1,500円程と思われます。
症状や治療の内容によって金額は異なります。
よくある質問
治癒の確認は必要ですか?
はい、治ったかどうかを確認するために、治療後も定期的に血液検査を行います。おおよそ4週間ごとに検査を行い、抗体の値(RPR)をチェックします。RPRの値が半分以下に下がれば治癒と判定できますが、その後も1年ほど経過観察することをおすすめしています。
妊娠への影響はありますか?
梅毒に感染している妊婦さんが治療を受けないままでいると、お腹の赤ちゃんに感染が広がってしまうことがあります。これを「先天梅毒」といい、流産、早産、胎児の異常などが起こるリスクがあります。早期に発見して治療すれば、赤ちゃんへの感染は防げますので、妊娠中もお気軽ご相談ください。

