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病状について
子宮腺筋症
概要
子宮腺筋症は、子宮内膜に類似した腺上皮および間質組織が子宮筋層内に発生する良性の疾患です。子宮全体が肥大する場合もあれば、一部のみ肥大して子宮筋腫との鑑別が必要となる場合もあります。以前は子宮内膜症の一部と考えられてきましたが、現在では臨床像や治療法が異なるため、別の疾患として扱われています。
この疾患は40歳代に発症のピークがあり、経産婦に多く見られます。妊娠した場合には、流産や早産のリスクが上昇します。日本における子宮腺筋症の罹患率は5~70%(平均20~30%)とされており、子宮腺筋症患者の6~20%に子宮内膜症が合併し、64%に子宮筋腫を合併するといわれています。そのため、治療においてこれらの合併症を考慮する必要があります。
症状
疼痛(月経痛、慢性骨盤痛、性交痛、排便痛)
子宮出血(月経過多、不正子宮出血、貧血)
検査方法
診断には超音波検査が必須です。さらに詳しく調べる場合は、腫瘍マーカー等の血液検査やMRI検査を行います。
治療方法
①薬物療法
a)対症療法
貧血に対する鉄剤
過多月経に対する止血剤
疼痛に対する非ステロイド性抗炎症(NSAIDs)
b)ホルモン療法
卵胞および黄体ホルモン配合製剤
(例:ヤーズ、ドロエチ、ルナベル、フリウェル など)
黄体ホルモン製剤
(例:ジエノゲスト)
②手術療法
a)根治療法
子宮全摘術、腟上部切断術
b)温存療法
子宮腺筋症病巣切除術
(有効性や安全性の検討が今後必要です)
早期に見つかれば治療の選択肢が広がります。早めの受診をお勧めします。
子宮筋腫
概要
子宮は成人女性で鶏卵ほどの大きさがあり、骨盤の中央に位置しています。その構造は3層から成り、内側から「子宮内膜」「子宮筋層」「漿膜」に分かれます。子宮筋腫は、この「子宮筋層」にある平滑筋という筋肉に発生する良性の腫瘍です。
子宮筋腫は、婦人科で最も多く見られる腫瘍で、30歳以上の女性の20~30%に発生するとされています。複数個できることもあります。女性ホルモンが関与しているため、初経前には発生せず、性成熟期に大きくなることが特徴です。閉経後にはホルモンの影響が減少するため、多くの場合縮小します。
子宮筋腫は良性であるため、診断されたからといって必ず治療が必要なわけではありません。腫瘍の大きさや症状、妊娠希望の有無、閉経までの期間などを考慮して治療方針を決めることになります。
症状
子宮筋腫の症状は個人差が大きく、約半数の方は無症状です。ただし、筋腫の発生場所や大きさ、増大する方向によっては次のような症状が現れることがあります。
粘膜下筋腫(子宮腔内に発育する場合)
過多月経や月経困難症を引き起こしやすい
不妊の原因となることもある
漿膜下筋腫(子宮外側に発育する場合)
腹部にしこりを感じたり、圧迫感が生じます。
感染や炎症を伴うと、痛みが現れる場合もあります。
筋層内筋腫(子宮筋層内で発生する場合)
発育方向によって症状が変わり、粘膜下、漿膜下、いずれか一方の症状が、大きさによっては両方の症状が出る場合もあります。
検査方法
子宮筋腫の診断には以下の方法が用いられます。
超音波検査
最も一般的な診断方法です。
MRI検査
詳細な画像が得られるため、腫瘍の位置や性質をより正確に判断できます。
治療方法
治療法は、筋腫の大きさや症状、妊娠希望の有無などを考慮して決定します。以下に代表的な治療法を挙げます。
- 経過観察
症状が乏しい場合、定期的に検査を行いながら経過を観察します。 - 対症療法
症状に応じた治療を行います。
貧血:鉄剤の内服
月経困難症:鎮痛剤やホルモン剤、漢方薬の内服 - ホルモン治療
一時的にホルモン療法を行い、筋腫を縮小させます。
手術を有利に進めるためや
閉経が近い場合に治療後の閉経を期待して行うことが多いです - 手術
筋腫の大きさや症状に応じて以下の手術を選択します。
子宮全摘術(腹式・腟式・腹腔鏡下)
子宮筋腫核出術(腹式・腹腔鏡下・子宮鏡下)
※子宮筋腫核出術後に妊娠した場合、帝王切開での出産が必要です。 - その他の治療法
子宮動脈塞栓術
MRガイド下集束超音波治療
※これらは一般的ではありませんが、適応がある場合に選択肢となることもあります。
最適な治療法を見つけるために
治療法を選択する際は、主治医の説明をよく聞き、現状や将来の希望に合わせた最適な治療法を選びましょう。十分に相談することが大切です。
子宮内膜症
概要
子宮内膜症とは、子宮内腔や子宮筋層(子宮の壁)以外の場所に、子宮内膜に似た組織が発生・成長する病気です。この組織が原因で卵巣が腫れたり、子宮や卵巣が周辺の臓器と癒着したりすることがあります。
この病気は、軽度のものも含めると、10人に1人の女性に見られるともいわれています。原因についてはさまざまな説がありますが、まだはっきりとしたものは分かっていません。
早期発見が重要です
子宮内膜症の兆候として、月経痛が以前よりひどくなることが挙げられます。この段階で治療を始めると、病気の進行を抑えることが期待できます。また、子宮内膜症による嚢胞(のうほう)が10cm以上に大きくなると、がんを併発するリスクが高まることも知られています。
症状
子宮内膜症の症状は多岐にわたります。以下に代表的なものを挙げます。
疼痛(痛み)
月経困難症(生理中の強い痛み)
下腹部痛
性交痛
排便痛
腰痛
不妊症
その他の症状
病変が発生する部位によって、さまざまな症状が現れることがあります。
尿路の症状:排尿時の痛み、血尿
消化器の症状:血便、腸の通過障害
呼吸器の症状:気胸、血痰、胸痛
診断方法
子宮内膜症の診断には、以下の方法が用いられます。
内診
子宮と直腸の間(ダグラス窩)の状態など、子宮内膜症特有の所見を確認します。
超音波検査
腹部や経膣から超音波を使って内部の状態を調べます。
その他の検査
腫瘍マーカーの測定やMRI検査が行われることもあります。
治療方法
子宮内膜症の治療は、症状や進行状況に応じて選択されます。主に以下の2つの方法があります。
a) 薬物療法
鎮痛剤の使用
月経痛や性交痛など、痛みを和らげるために使用します。
ホルモン療法
子宮内膜症の病巣を縮小させたり、手術の効果を高めたりするために、手術前に投与されることがあります。
また、再発を防ぐためにも用いられます。
b) 手術療法
腹腔鏡下手術や開腹手術
子宮内膜症の病巣を直接取り除くために行われます。
ただし、早期発見や治療を行えば、手術を回避できる場合もあります。
早期受診をおすすめします
子宮内膜症は放置すると進行しやすい病気です。気になる症状がある場合は、早めに医師に相談してください。適切な治療を受けることで、痛みや症状の改善、生活の質の向上が期待できます。
卵巣腫瘍
概要
発生する確率は女性の全生涯で5~7%とされています。大きく分けて良性、境界悪性、悪性の3群に分類されます。
超音波検査、さらにMRI、腫瘍マーカーを加えて判別できるものも多いですが、最終的には手術で摘出された腫瘍の病理組織検査(顕微鏡での詳しい検査)で診断します。
①良性腫瘍
良性であっても捻転(ねじれるという意味)したり、破裂したり、緊急手術が必要になる可能性があります。長径が5cmを超える場合は捻転するリスクが高くなるという報告もあります。
主だったものは
a)子宮内膜症性嚢胞(内容は古い血液、チョコレート嚢胞ともいわれている)
卵巣腫瘍でもっとも頻度が高く、17.4%を占めます。
子宮内膜症の記事も参照ください。
b)成熟奇形腫(内容は髪の毛、脂肪、骨等)
卵巣腫瘍の中で10%ほどを占めます。発症年齢は幅広いですが、生殖可能年齢に多い.しかし胎児、新生児期にも発見されることや、25%程度は閉経期以降に見られるとの報告もあります。両側性発生が10~15%に見られ、異なる時期に認められることがあります。
c)漿液性腺腫(内容はさらさらの液体)
卵巣腫瘍の中で10%ほどを占めます。好発年齢は40歳代から60歳代といわれています。
d)粘液性腺腫(内容はドロッとした粘液)
多くは片側性、多房性(いくつかの部屋に分かれている)で、漿液性腫瘍に較べて大きな例が多く、長径30センチを越える巨大なものも珍しくありません。
症状
無症状の場合が多いですが、腫瘍の増大に伴い、違和感、圧迫感、さらに増大すれば腫瘍を触知するようになります。捻転や破裂で強い疼痛が出現し、発覚することもあります。
子宮内膜症性嚢胞は他と違い、月経痛、性交痛、排便痛等も出現してきます。
検査
内診だけでなく、超音波検査が必須。MRI、腫瘍マーカーでさらに詳しい情報が得られます。
治療
小さければ、経過観察。
子宮内膜症性嚢胞のみホルモン治療の可能性があります。
(黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト)、卵胞・黄体ホルモン配合製剤(ドロエチ、フリウェル等)) その他は基本的には手術療法
(開腹、腹腔鏡下)腫瘍切除
または(開腹、腹腔鏡下)付属器切除(卵巣、卵管を併せて付属器といいます)
良性であって、無症状でも一定以上の大きさになったら手術を考慮してください。
あまりに大きくなったり、捻転等で炎症が強い場合、片側の付属器切除になってしまう場合があります。将来的に妊娠に不利に働く場合があります。
②境界悪性、悪性腫瘍
良性腫瘍に準じて検査を進めていきますが、悪性の可能性が出てきたら、地域の基幹病院等に紹介します。
症状があれば、早めの受診をお願いします。
病気が密かに進行していく可能性がありますので、超音波検査を含めた検診もご一考ください。
卵巣癌
概要
卵巣癌は、卵巣に発生する癌です。発生頻度は、全女性性器悪性腫瘍の約15%、日本における罹患数・死亡数はともに増加傾向で、女性性器悪性腫瘍の中では最も死亡者数が多いとされています。卵巣は性成熟期で母指頭大と小さく(閉経後はさらに縮小)、大きさの変化に気づきにくく、気づいたときには進行しており、約40~50%の症例がⅢ・Ⅳ期と考えられています。定期的に健診で超音波検査を受けることが大切と考えます。危険因子として未産、肥満、エストロゲン単独のホルモン補充療法などが報告されています。逆にリスクを低下させる因子として経口避妊薬の使用があります。卵巣癌や乳癌の家族歴にも注意しましょう。
症状
自覚症状に乏しく、無症状のうちに進行している場合が多いです。初発症状として、腹部腫瘤や腹部膨満感、これに伴う周囲臓器への圧迫症状、排便・排尿障害、腹痛、摂食困難、月経不順や不正性器出血を主訴として受診することもあります。
検査
卵巣癌の診断には以下の検査を行います。
• 超音波検査:卵巣の異常を確認します。
• 血液検査:腫瘍マーカー(CA125など)を測定します。
• CT・MRI検査:がんの広がりや状態を詳しく確認します。
治療
疑われる卵巣癌の種類や広がりによって手術や化学療法が考慮されます。手術後だけでなく、手術前に化学療法を行う場合もあります。
伝えたいこと
• 早期発見が重要:症状が出ない場合もあるため、年に一度の婦人科検診をおすすめします。
性器クラミジア感染症
概要
性器クラミジア感染症はクラミジア・トラコマティスが主に泌尿生殖器に感染して発症する疾患です。その患者数は世界的にも全ての性感染症の中で最も多いと言われています。男女ともに無症状の保菌者が多数存在するため蔓延するのを食い止めるのが困難となっています。
また、クラミジア陽性者の約10%に淋菌感染が合併していると言われています。
クラミジア性子宮頸管炎は感染後1〜3週間で発症します。子宮、卵管を経て腹腔内に侵入し卵管や卵巣の炎症や骨盤腹膜炎を発症します。さらに上腹部に感染が広がれば肝臓周辺にまで炎症が及ぶこともあります。
またいろいろな後遺症も問題です。
- ①卵管が障害を受ければ、不妊症や卵管妊娠の原因になることがあります。
- ②妊娠中に感染を起こせば流産、早産の原因にもなります。
- ③出産時には新生児の目や肺の炎症を引き起こすこともあります。
症状
帯下(おりもの)の増加、不正出血、下腹痛、性交痛が出現する事もありますが、半数以上に自覚症状がないとの報告もあります。またオーラルセックスで咽頭に感染を起こすこともあります。
検査方法
子宮頚部の帯下の感染検査を行います。ただクラミジアは感染する範囲が広く、子宮頚部のみの検索では全体像の把握が困難な場合があるため、触診、画像検査、血液検査等を含めて総合的な判断が必要な場合があります。また、クラミジア陽性者の約10%に淋菌感染合併があるため、クラミジア、淋菌同時検査も可能です。
治療方法
抗生剤の内服や注射で治療を行います。
治療開始から3週間後に再検査を行い、陰性が確認できれば治療完了です。
クラミジアの感染が長期にわたると後遺症のリスクも上昇します。
少しでも疑わしい症状がある場合はクリニックで検査を受けましょう。また、パートナーが感染している場合や感染が疑われる場合も検査をすることをお勧めします。
性器ヘルペスとは
概要
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因で発生する病気です。このウイルスは性器に浅い潰瘍や水ぶくれのような病変を引き起こします。一度感染すると、ウイルスは神経節に潜伏し、その後も繰り返し症状が現れることがあります。
性器ヘルペスは、以下の3つのタイプに分類されます
初感染初発
初めて感染した際に症状が現れる状態です。性的接触後2~10日ほどで発症し、病変が広範囲に及び、発熱や全身のだるさなど強い症状を伴います。治癒までには通常2~3週間かかりますが、抗ヘルペスウイルス薬を使用すると1~2週間に短縮されます。
非初感染初発
過去に感染したことがある場合に発症するタイプです。この場合、症状は軽く、治癒までの期間も短いことが一般的です。
再発
ウイルスが神経節に潜伏している状態から再び活性化することで起こります。性器やお尻、大腿部に小さな潰瘍や水ぶくれが数個できることが多く、軽い外陰部の違和感や神経痛のような前兆が現れることもあります。再発は1週間以内に自然に治ることがほとんどですが、疲労、風邪、月経、性行為などが引き金となることがあります。
また、無症状のままウイルスが排泄されることもあります(無症候性排泄)。この場合、自分では気づかなくても膣分泌物にウイルスが含まれ、パートナーに感染させるリスクがあります。
検査方法
検査は、病変部をぬぐった検体を用いた検査や、病歴、症状、局所の所見などをもとに診断します。
治療方法
性器ヘルペスには、抗ウイルス薬の内服や点滴治療が有効です。軽症の場合、塗り薬を使用することもありますが、ウイルスの排泄を完全に抑えることは難しく、治癒までの期間も短縮できないとされています。
頻繁に再発する場合は、再発を予防するための「再発抑制療法」を行うこともあります。
早期治療の重要性
性器ヘルペスが疑われる症状がある方は、できるだけ早くご来院ください。早期の治療が、症状の悪化を防ぐ鍵です。また、性行為の際は完全に予防することは難しいものの、コンドームを使用することで感染リスクを減らすことができます。
外陰部膣カンジダ症
概要
外陰部膣カンジダ症は、日常的によく見られる疾患であり、75%の女性が生涯に一度は経験するといわれています。主な原因菌は、消化管や皮膚の常在菌であるCandida albicansです。この菌は直腸から肛門、会陰を経由して腟に移行します。ただし、菌が検出されただけではカンジダ症と診断されず、明確な症状や所見が出現して初めて診断されます。そのため、菌が検出された場合でも、症状がない限り治療の対象にはなりません。
膣内のカンジダ保有率は、非妊婦で15%、妊婦で30%とされています。そのうち、発症率は非妊婦で35%、妊婦で15~30%です。誘因として最も多いのは抗菌薬の内服後ですが、その他にも妊娠、糖尿病、消耗性疾患などが関与する場合があります。原因が特定できないことも少なくありません。この疾患の性交感染率は約5%と低いため、パートナーの追跡調査は必須ではないとされています。
症状
主な症状として、外陰部や膣のかゆみ、帯下の増量(酒粕状やヨーグルト状)があります。また、灼熱感や痛みを訴えることもあります。
検査方法
帯下を採取し、顕微鏡での観察や培養検査を行います。
治療方法
腟錠や塗布薬を使用します。
(治療例)クロトリマゾール膣錠、クロトリマゾールクリーム
また、内服薬が処方される場合もあります。
(治療例)フルコナゾール
注意事項
局所の清潔を保ち、石鹸の使用を控えることが推奨されます(石鹸は皮膚や粘膜を刺激し、炎症を悪化させる可能性があるため)。
治癒の判定は、カンジダの消失確認ではなく、かゆみや帯下の異常といった症状が消失したことを基準とします。
更年期障害
概念
更年期障害とは、女性が閉経を迎える前後に起こる、器質的変化に起因しない、日常生活に支障を来す心身の不調を指します。多くの場合、40代後半から50代前半に発生します。女性の体はこの時期に、卵巣機能の低下によりホルモンバランスが急激に変化します。これに加齢に伴う退行性変化、精神・心理的な要因、社会的な背景因子が複合的に影響することで、身体的・精神的な不調を引き起こす原因となります。日本における有症率の正確な統計はないが、この時期の女性の約50~80%が更年期症状を訴えるといわれており、少なく見積もって、日本では400万人もが治療対象となるとされています。
症状
更年期障害の症状は多岐にわたり、一説には症状は300以上あるといわれています。症状の程度や現れ方には個人差があります。日本における特徴はホットフラッシュや発汗などに比較して、疲労感、肩こりが多いことと身体的症状と同様に精神的症状の頻度が高いことが挙げられます。
身体的な症状
• ホットフラッシュ:突然の顔や首のほてり、発汗
• 動悸:特に安静時に感じる心臓の動きの乱れ
• 関節や筋肉の痛み:体のあちこちがこわばったり痛む
• 頭痛やめまい:頻繁に感じる場合があります
• 倦怠感:疲れやすく、体力の低下を感じる
精神的な症状
• イライラ感や不安感:特に理由なく感情が揺れる
• 抑うつ感:気分が落ち込みやすくなる
• 睡眠障害:寝つきが悪い、眠りが浅い
• 集中力の低下:物事に集中しづらくなる
これらの症状は一時的な場合もありますが、長期間続いたり日常生活に影響を与える場合は、更年期障害の可能性があります。
検査
更年期障害の診断は、主に問診で行います。血液検査を行う場合もあります。
- 問診
医師が症状や月経状況、生活習慣について詳しくお伺いします。気になる症状や不安があれば、遠慮せずお伝えください。 - 血液検査
エストロゲンやFSH(卵胞刺激ホルモン)等の血液検査を行う場合があります。
治療
更年期障害の治療法は、患者様の症状やライフスタイルに応じて選択されます。
- ホルモン補充療法(HRT)
減少したエストロゲンを補う治療法です。症状の改善が期待できますが、副作用のリスクもあるため、相談しながら進めます。 - 漢方薬
比較的副作用が少なく、冷え性や疲れやすさなどの症状を和らげる効果が期待できます。 - 生活習慣の改善
バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠を心掛けることで、症状が軽減する場合があります。特にストレス管理は重要です。 - その他の薬物療法
抗うつ薬や安定剤などを使用して、精神的な不調に対処することも可能です。
更年期障害で悩んでいる方へ
更年期障害は、誰にでも起こり得る自然な体の変化です。しかし、症状が重くなると生活の質が低下することもあります。当院では、患者様一人ひとりの状態やご希望に寄り添った診療を行っています。気になる症状がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
月経前症候群(PMS)
概念
月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)は「月経前3~10日間の黄体後期に発症する多種多様な精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減弱あるいは消失するもの」とされています。ホルモン状態が関与していますが、詳細は不明です。日本では生殖年齢女性の70~80%が月経前に何らかの心身の変調を自覚し、生殖年齢女性の6.5%が医学的介入の必要な中等症以上のPMSまたはPMDD(PMSの最重症型)と推定されています。
症状
情緒的症状:抑うつ、怒りの爆発、易刺激性・いらだち、不安、混乱、社会的引きこもり
身体的症状:乳房緊満感・腫脹、腹部膨満感、頭痛、関節痛・筋肉痛、体重増加、四肢の腫脹・浮腫
診断
過去3回の連続した月経周期のそれぞれにおける月経前5日間に、上記情緒的症状および身体的症状のうち少なくとも1つが存在すれば月経前症候群と診断できます。
治療
カウンセリング、生活指導、運動療法に加え
①身体的症状に利尿剤、鎮痛剤、ホルモン剤
②漢方薬
③情緒的症状にホルモン剤(ヤーズ、ドロエチ)、抗うつ薬(ジェイゾロフト、レクサプロ)
健やかな毎日のためにも、ぜひご来院ください。
月経困難症とは?
概念
月経困難症は、月経に伴って強い下腹部痛や腰痛などの症状が現れる病気です。これらの症状は、月経が始まる直前や月経中に現れることが多く、日常生活に支障をきたすこともあります。
月経困難症は、大きく以下の2つに分類されます。
- 機能性月経困難症
こちらは、子宮内で過剰に産生されるプロスタグランジンという内因性生理活性物質が原因となります。この物質が痛みを引き起こすことで症状が現れるとされています。 - 器質性月経困難症
こちらは、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症など、子宮やその周辺に特定の病気が存在することが原因です。
診断方法
月経困難症の原因を調べるためには、まず超音波検査を行います。この検査により、機能性なのか器質性なのかを判断します。
治療方法
治療は、月経困難症の種類によって異なります。
機能性月経困難症の場合
• 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):プロスタグランジンの産生を抑えることで痛みを軽減します。
• 漢方薬:体質に合わせた漢方薬を使うことで、自然な形で症状を和らげることができます。
• ホルモン剤
器質性月経困難症の場合
• 原因疾患の治療:子宮内膜症や子宮筋腫など、基礎疾患の治療を行います。
• ホルモン剤:症状の緩和や病気の進行を防ぐ目的で使用します。
月経困難症で悩んでいる方へ
「月経痛は我慢するもの」と思い込んでいる方も少なくありませんが、無理をせず早めに医師に相談することが大切です。特に、器質性月経困難症の原因となる子宮内膜症などは、早期発見が重要です。
つらい症状でお困りの方は、ぜひ当院にご相談ください。皆さまのお力になれるようサポートいたします。ご来院を心よりお待ちしております。
骨盤臓器脱・子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤
概要
骨盤臓器脱とは、骨盤内の臓器(子宮、膀胱、直腸など)が正常な位置から下がってしまう状態を指します。骨盤の筋肉や靭帯のゆるみが原因で、以下のような症状に分類されます。
• 子宮脱:子宮が膣内に下がり、場合によっては膣から外に出てしまう状態。
• 膀胱瘤:膀胱が膣に向かって膨らみ、膣内に突出する状態。
• 直腸瘤:直腸が膣に向かって膨らみ、膣壁を押し出す状態。
それぞれは1つずつとは限らず、同時に起こることも、3つすべてが起こることもあります。
経腟分娩を経験した女性の約50%が骨盤臓器脱の症状を有しており、一般女性の37~50%がある程度の骨盤臓器脱を有しているとされています。骨盤臓器脱患者の37%が下部尿路症状(腹圧性尿失禁、過活動膀胱)を有しています。
症状
• 骨盤周りの違和感や重い感じ
• 膣から何かが出ている感覚
• 尿漏れや排尿困難、頻尿
• 便秘や排便の困難さ
• 性交時の違和感や痛み
検査
診断には主に以下の方法を用います。
- 問診:症状や日常生活への影響、過去の出産や手術歴をお伺いします。
- 視診・触診:骨盤内臓器の位置や状態を確認します。
- 超音波検査:骨盤内臓器の構造や状態を詳しく調べます。
- 尿検査(必要に応じて):膀胱や尿道に関連する問題がある場合。
治療
治療方法は症状の程度や患者様のご希望に応じて選択します。
- 生活習慣の改善:体重管理や適度な運動を取り入れることで、骨盤底の負担を軽減します。
- 骨盤底筋トレーニング(Kegel体操):骨盤底の筋力を鍛えるエクササイズです。
- ペッサリー療法:膣内にリング状の器具を挿入し、臓器の位置をサポートします。
- 手術療法
患者様に伝えたいこと
• 早めの相談を:初期の段階で適切な治療を行うことで、症状の悪化を防ぐことが可能です。少しでも気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。
• 安心して受診を:性器脱は多くの女性が経験する症状であり、決して珍しいことではありません。恥ずかしさを感じる必要はありませんので、安心してご来院ください。
• 個別対応:治療法は一人ひとり異なります。当院では患者様のライフスタイルやご希望を大切にし、最適な治療プランをご提案します。
尖圭コンジローマ
概要
尖圭コンジローマは、主に6型または11型のヒトパピローマウイルス(HPV)による性感染症です。(子宮頸がんに関連するハイリスク型ではありません)性感染症の中でも、数少ないワクチンで予防できる疾患です。
症状
乳頭状、鶏冠状、またはカリフラワー状のイボが外陰部、膣、子宮頸部などに発生するほか、肛門周囲、肛門内や尿道にも発症する場合があります。一般に自覚症状はありませんが、痛みやかゆみが見られることもあります。
検査方法
視診による診断が可能です。(膣内や子宮頸部の観察も必要です) 悪性腫瘍との鑑別が必要な場合は、切除して組織診断を行います。
治療方法
ベセルナクリームの外用による薬物療法
切除、冷凍療法、電気焼灼、レーザー蒸散術による外科的療法
治癒判定
視診によって行います。ただし、周囲にも感染している可能性があり、また3カ月以内に約25%が再発することから、最低3か月間は追跡する必要があります。
パートナーの治療
パートナーに病変がある場合は治療が必要です。
妊娠に関連して
尖圭コンジローマに罹患中または罹患後に妊娠した場合、出生する児が若年性再発性呼吸器乳頭腫症という厄介な疾患を発症することがありますので、注意が必要です。妊娠中の治療には冷凍療法、電気焼灼、レーザー蒸散術による外科的療法が望ましいです。
予防
尖圭コンジローマの感染予防効果が期待できる子宮頸がんワクチンを接種しましょう。
淋菌感染症
概要
淋菌感染症は主に性交を通じて感染する病気です。感染は子宮の入口や奥、卵巣、その周囲、骨盤全体、さらには肝臓周囲にまで及ぶことがあります。また、性行動の多様化により、時に眼、喉、直腸にも感染し、発症することがあります。
この病気は放置すると、異所性妊娠や不妊症の原因となることがあります。さらに、妊娠中に感染すると、出産時に新生児が眼に炎症を起こす可能性があります。
症状
男性の場合、尿道痛が特徴的な症状として現れます。一方、女性の場合は帯下(おりもの)がわずかに増える程度で、約50%が無症状感染と言われています。また、喉に感染した場合は咽頭炎の症状を引き起こすことがありますが、多くの場合は無症状です。
性器淋菌感染者のうち、10~30%の方からは咽頭に淋菌が検出されるというデータもあります。
検査
淋菌感染症の検査は、以下の方法で行います。
- 性器感染の場合:子宮の入口から粘液を採取し検査します。
- 喉の感染の場合:扁桃腺周囲を拭った検体やうがい液を用いて検査します。
また、淋菌感染症の患者さんには、クラミジアとの重複感染が認められる場合もあります。そのため、クラミジアの検査も同時に行うことが推奨されています。
治療
治療では、薬剤耐性菌の存在が問題となっています。そのため、現在は内服薬のみでの治療は推奨されていません。第一選択として、注射薬2種類のうち1種類を使用する治療法が採られています。
また、耐性菌が存在する可能性があるため、治療後に効果判定を行い、感染が確実に治癒しているか確認することが重要です。
パートナーの検査
淋菌感染症はパートナー間で感染が広がるリスクが高いため、患者さんのパートナーにも検査を行うことが推奨されています。男性患者の約10%、女性患者の約50%が無症状であるため、男女問わずパートナーの検査が重要です。
腟トリコモナス症
概要
腟トリコモナス症は、Trichomonas vaginalisという原虫が女性の尿道、腟、外陰部、おりものを分泌する腺などに感染し、尿道炎や腟炎を引き起こす性感染症です。感染者の年齢層は非常に幅広く、幼児から中高年者に至るまで見られることが特徴です。
患者自身の腟だけでなく、子宮頸管内、下部尿路、またはパートナーの尿路や前立腺にも侵入することがあり、ピンポン感染を引き起こす可能性があります。また、身につける下着やタオル、検診台、便器、浴槽を介した感染が報告されています。
症状
腟トリコモナス症に感染すると、以下のような症状が現れることがあります。
泡状で悪臭の強いおりものが増える
外陰部や腟の刺激感
強いかゆみ
ただし、感染者の10~20%は無症状とされています。
検査
腟トリコモナス症の診断には、以下の検査方法が用いられます。
顕微鏡による観察
培養検査
治療
治療は内服薬による全身投与が原則です。ただし、治療中に飲酒すると腹痛や嘔吐、潮紅などのアンタビュース様作用が現れることがあるため、投与中および投与後3日間は飲酒を避ける必要があります。
治癒の判定
治癒の判定は、以下の基準に基づいて行われます。
症状の消失
原虫の消失を確認(月経後にも検査を実施)
パートナーの検査
男性は一般的に無症状であることが多く、また原虫の検出が困難な場合があります。そのため、パートナーも同時に治療を受けることが望ましいとされています。
妊娠中・授乳中の注意点
腟トリコモナス症は、早産や切迫早産、低出生体重児と関連があるとされています。治療に使用する薬剤については、医師と相談の上で決定してください。
最後に
腟トリコモナス症は適切な治療を受けることで完治する病気ですが、感染を防ぐためには早期発見と適切な対策が重要です。症状がある場合や感染リスクがある行動を取った場合は、早めに婦人科を受診するようにしましょう。