2025/05/26
― 妊婦さんやご家族の皆さまへ ―(2025年春・こむかい産婦人科)
はじめに
最近、東京都内で水痘(みずぼうそう)の感染者数が増加し、注意報基準を超える地域もありました。5月22日時点で注意報は解除されましたが、依然として平年より多い報告数が続いています。
水痘はお子さんに多い病気ですが、大人や妊婦さんがかかると重症化することがあります。特に妊娠中の感染は、胎児や新生児に影響を与えることもあるため注意が必要です。
今回は、妊娠中の方・これから妊娠を考えている方、そのご家族や身近な方々に向けて、大切な情報をお伝えします。
水痘とは?
水痘は「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」による感染症で、発熱とともに体にかゆみを伴う水ぶくれが出る病気です。
感染経路は以下のとおりで、非常に感染力が強いとされています:
- 空気感染(飛沫)
- 水疱内容物との接触感染
同居する家族に感染者がいる、患者と5分以上対面した、同じ部屋に1時間以上いたなどの状況では、感染の可能性が高まります。
妊婦さんが感染した場合のリスク
妊婦さんが水痘にかかると、次のようなリスクがあります:
- 重症化することがあり、肺炎・肝炎・脳炎などを併発することもあります。
- 妊娠中は水痘ワクチンを接種できません。
- 母体だけでなく、胎児や新生児に影響が及ぶ可能性があります。
胎児・新生児への影響
先天性水痘症候群
妊婦さんが妊娠中に初めて水痘に感染した場合、胎児に先天性水痘症候群を引き起こす可能性があります。
この症候群では、以下のような症状が現れることがあります:
- 四肢の皮膚に瘢痕(きずあと)
- 四肢の形成不全
- 眼の異常
- 中枢神経系の障害 など
発症リスクは、妊娠中期が最も高く1.4%程度とされ、妊娠初期ではそれより低く、妊娠後期にはほとんど発症しないとされています。
新生児水痘
出産の5日前から出産2日後までに母親が水痘にかかると、生まれた赤ちゃんが新生児水痘を発症することがあります。
これは重症化しやすく、命にかかわることもあるため、注意が必要です。
妊婦さん・これから妊娠を考えている方・ご家族へのお願い
妊娠中の方へ
- 感染者との接触を避けるよう心がけましょう。
- 手洗いやマスク着用など、基本的な感染対策をしっかり行いましょう。
- 発疹や発熱など気になる症状があるときは、早めに当院へご相談ください。
妊娠を希望されている方へ
- 水痘にかかったことがあるか、ワクチン接種歴があるか、抗体検査で確認できます。
- 必要に応じて、ワクチン接種を検討しましょう。接種後は1か月間の避妊が必要です。
- 接種後約2カ月間の避妊が推奨されています。
ご家族や周囲の方へ
- 妊婦さんの周囲にいる方も、感染防止がとても大切です。
- 抗体価が低い場合や不明な場合は、水痘ワクチンの接種をご検討ください。
- ご家族が感染源とならないよう、体調管理や基本的な感染対策を徹底しましょう。
最後に
こむかい産婦人科では、妊娠中の方やこれから妊娠を希望される方、そのご家族の皆さまに向けて、最新の情報とアドバイスを提供しています。
なお、水痘や帯状疱疹に関する詳しい対処法や妊娠中の対応についてもっと知りたい方は、当院作成の妊娠中の疾患ページもご覧ください。
水痘と帯状疱疹 妊婦対処まとめはこちら
「心配なことがある」「自分や家族の免疫がわからない」といった場合も、お気軽にご相談ください。皆さまが安心して妊娠・出産を迎えられるよう、当院が全力でサポートいたします。